コラム

第9回
グッドマンの法則1

第4回では、顧客について考えていただきました。今回の「クレーム対応を科学する」の本題はこれからなのです。
今いる患者さはもちろん職員を満足させるだけでなく、病院のファンになっていただき、たとえ不満があったとしてもその不満をうまく解決することにより、病院のファンになってもらうことにより、減少する自分の顧客を維持していくだけでなく増やしていく施策こそが今回の課題なのです。

前のシリーズでも紹介したのですが、もう一度グッドマンの法則について説明します。
この法則は、ジョン・グッドマン氏が、1970年と84年にホワイトハウスの委託によって消費者行動における調査を行い重要な事実を発見しました。当時その報告書を読んだ佐藤知恭先生が日本で「グッドマンの法則」として紹介した経緯があります。なんと40年前の発見です。
グッドマン氏が1979年当時ホワイトハウスの委託調査で明らかになったことは、サービスに不満があっても実際に申し立てをする人はおそらくは、実際クレームをいう顧客は不平を持っている人の全体の5~25%程度、上層部まで届くのは、全体の1~5%程度だけであるという結果が出た。同様の調査を2013年に実施したが、ほぼ結果は変わらなかったとのことです。つまり、上層部(事務長や看護部長)に月に5件程度上がってきているとすると、少なくとも100人から500人程度の人が同じことを感じていて、そのうち現場で25人から125人の患者からクレームを受けていることになります。この数字を多いと思うか少ないと思うかはわかりませんが、現場で対応すればよいというレベルではないと思われます。
あなたの病院で予測してみましょう。

経営者層 部門長 一般管理職 現場で受けている
規準例 0~1件 1~5件 5~25件 100件
あなたの病院

実際に現場で対応して解決していることがほとんどです。
しかし考えてください。現場で働いている職員は毎日些細ではあるが、同じような苦情を患者から受けて、そのたびに言い訳に近い対応をしています。その対応する時間だけ職員の生産性が低下し、職員の意識も少しずつ削れていくのです。それだけでなく、患者の気持ちに鈍感になり、患者目線とは程遠い職員に変化していくのです。実際私たちの経験でも、多くの病院は同じような事情です。
「そんなにたくさんクレームはないよ」「投書箱にはあまり入っていないよ」という病院で、現場で対応した患者の不平クレームを出してほしいというと、びっくりするくらいの量が集まります。一度お試しになってはいかがですか?
一方患者もまた、我慢しながら同じような対応を受けているのです。今病院に来ている患者さんの多くは我慢をして来院しています。我慢と、必要度や選択肢を天秤にかけているのです。
特徴があり、他の選択肢が少ない病院は、その患者にとって必須の病院であれば、少々の不満があっても患者は来院せずにはいられません。もし、あなたの病院がそのような病院であった場合、クレームはほとんど表面化しません。しかし、それは患者が満足しているのではなく、仕方なしに来院もしくは入院しているかもしれません。その結果、職員が患者の気持ちに鈍感になってしまうのです。それだけでなく、職員のモチベーションが落ち、最近の病院や施設での職員が起こした不幸な事件や出来事の遠因になっているかもしれません。そこまでいかなくても、多くの職員が患者の気持ちに鈍感になって、仕事に対する意味を見失い退職していく人材も多いのです。