お悩み解決事例

CASE01

クレーム対応に追われ業務に集中できない

病院へのクレームと「お客様視点」

クレームを、多くの患者さんの「声にならない期待」をあらわすものと考え、患者さんの意見を前向きに調査・検討する。そのための組織をつくり、その活動に病院スタッフ全員を巻き込む。すると働く人の満足度も高まり、病院の評判が上がって経営が改善される……さまざまな医療現場の要請に応えて、私たちはそんな考え方とシステムを考案しました。

かつて私たちが、とある大病院の改革をお手伝いした際の話です。最初に、スタッフを悩ませ、また病院の評判をも左右するクレームに対処しようと、クレーム対策を専門に行う組織を立ち上げました。個々のスタッフが受けたクレームを引き継ぐための「患者さんの不満解決窓口(クレーム相談窓口)」や「よろず相談所」のようなものです。「クレーム解決」ではなく「不満解決」と名付ける理由は、職員に先入観を持ってほしくなかったからです。

これらの組織では院内から受付メンバーを選出し、私たちは外部委員として参加しました。「相手の言葉はきちんと聞く」「理解と共感」「先入観は持たない」などの原則をもとに、私どもがマニュアルを作成し、実際の対応を始めました。すると、当初は半信半疑で参加していた選出メンバーの、目の色が変わってきました。「なるほど、ひどく怒っていた患者さんには理由があったんですね。きちんと聞こうとしなかったスタッフにも非がありました」とか、「クレームと一言でいっても、パターンがある。読み比べていくと、特にどの部分が患者さんのお怒りを買っているのか、分かってきました」と言い、私たちの、一般企業ではいかに『顧客第一』視点で接遇対応を行っているか」の解説にも熱心に耳を傾けてくれるようになったのです。

これは、病院でも事務方が始めた取り組みでしたが、次第に医師や看護師の参加が増え、よろず相談所はその後、クレーム対応から患者さんへの接遇向上にと目的を変更し、名称も「接遇委員会」に改まりました。するとやがて、「もっと積極的に、お客様である患者さんの満足度を上げよう」という気運が高まり、この接遇委員会は「PS委員会(患者満足度向上委員会の別称)」と、その内部の「患者·利用者の不満解決窓口」に成長していきました。

これらの委員会の働きが大きかったといえるでしょう、数年後には病院全体の評価が高まっていたのです。クレームは決して無視せず、大切なヒントとして扱うのです。患者満足度向上委員会内に設けるクレーム受付専用窓口では、クレームを受ける際の、院内ルールの作成・周知も行うようにしました。病院スタッフたる者、誰でもきちんとクレームを受け止められる体制づくりが大切です。

クレームを受ける、改善する。患者満足度を調査する。これを実直にくり返すうちに、スタッフ全体の接遇スキルは底上げされ、それに伴って病院の評判も高まっていくことでしょう。そうなれば、一部のスタッフに業務が殺到するようなことはありませんし、クレームで消耗する必要はありません。