コラム

第3回
顧客満足度の考え方の変遷

前回はCX3.0が新しい概念ではなくすでに1990年代に多くの顧客満足度経営を提唱する先生方が発言されていたことであり、実際に成功している企業も多く存在するということを述べました。
しかし、なぜ今改めてなのかを考えていこうと思います。ただ、以下は私の理解ですので、正確ではないかもしれません。

年代別 考え方 時代背景 代表的業界、企業
1970年代
CX1.0
大量生産、大量消費時代が終わり、顧客は個客に変化する時代に突入した。その結果、個々の顧客に注目し、顧客満足度を向上することにより、顧客を増加していく経営をしなければならない。 メーカーが考えて消費者に販売していた、いわゆるメーカー主導のマーケティングに限界が出てきた。顧客の声を聴く、つまり顧客満足度(CS)が重要視されてきた。 自動車業界
一般大衆消費者を対象とする商品
2000年代
CX2.0
顧客からのクレームに対応することにより、顧客満足度は向上する。クレームという顧客の声を聴いて業務改善を実施していくことにより、顧客満足度からロイヤリティを持った顧客を育てることができる。 グローバル化に伴いCRM(顧客関係管理)がブームになった。IT化によりユーザーサポートが重要視され、苦情やクレームを受けると即座に対応することが重要視されてきた。 顧客満足、顧客ロイヤリティが重要視された。ただし、CRMのプロセスは必ずしも顧客視点ではなく、サプライヤー視点だった。 金融業界、
マイクロソフト、デル等のIT業界、
通信業界
ウォルマート
2010年以降
CX3.0
顧客満足、顧客ロイヤリティを高めることによりカスタマーサービスを戦略的に位置付けて、顧客の疑問やトラブルに事前に対応し、未然に防止することにより、顧客との継続的かつ良好な関係を構築することは収益面でも改善される 今までの経験を活かしながら、顧客ロイヤリティのアップが収益につながる手順は明確になり、何をしなければならないかが明確になった。40年前に提唱されたMOTサイクル、グッドマンの法則がベースになっている。 アマゾン、
スターバックス、

約50年の顧客満足の変遷について、簡単に私の理解を書きました。
私の理解では、CX3.0は、半世紀にわたる顧客満足度を上げて、良好な関係を継続し、収益も結果的にアップするという成功した企業が多く出てきたこと、またその手順について共通点があることが証明されてきたからこそ、3.0と言われているのだと思います。つまり、結果論であった顧客満足と収益の関係について、何らかの共通点と手順、そしてエビデンスができてきたのだと思います。
これらの内容は、佐藤先生や、ヤン・カールソン氏が言っているだけでなく、(顧客体験の教科書400ページから415ページ)ピーター・ドラッカー氏も同じことを言っています。
その手順こそが3.0の特長と考えます。
さて、このコラムを読んでくださっている方は、医療福祉関係の方が多いです。「じゃあ医療業界はどうなの?」「一般企業と違うんだから」という声が聞こえてきそうです。

そうなんです。今でも「研修なんかしても意味があまりないよ」という声を聞きます。実際私たちが実施している研修の多くは、収益と直接関係がなく、マナーアップやクレームを少なくするといったことを目的としていました。申し訳ございません。
しかし、私は、今までの経験から、医療機関もまた顧客との関係を良好に継続させることができれば、収益がアップできると考えています。実際に収益がアップした医療機関もあります。 次回からそのことについて考察していきましょう。