第7回
クレーム対応は、職員満足度向上の最高のツール
職員が高いモチベーションを維持し、継続的に働く要素は以下の3要素と言われています。
3要素 | 具体的な項目 |
---|---|
公平感を示す | 安心して働ける環境、評価制度。 |
達成感を与える | 病院のビジョンの明確化、権限委譲、やりがい、感謝される、 |
連帯感を強める | チームで仕事をしている |
職員満足度を高めるには、福利厚生の充実や給与待遇の改善等(公平感を示す)がすぐに浮かびますが、実はそれだけでは、職員満足度があがらないことは既にみなさんご存知のことです。達成感、連帯感をも満足させなければいけないのです。
あとの2項目を満足させるために、私たちは「クレーム対応」をツールとして利用しようと考えたのです。
よく言われるのは、クレームをなくすると職員は安心して働けるようになると思っている方がまだいらっしゃるようです。それは本当でしょうか?クレームの発生原因が「患者の期待を裏切る」ということです。つまり、期待されていないとクレームは発生することはないのです。期待されていない病院とは、良い病院ではなく、終わっている病院なのです。
「クレーム対応」は、患者の不平不満を解消し患者満足度を向上させることであり、患者目線、患者第一主義というビジョンを達成しようとするものなのです。このことは多くの医療機関が、目標に掲げていることと大差はありません。
「クレーム対応」を分解します。
①患者から不平、不満を言われる。
②不平不満に対して対応し、何らかの形で解決する。
③クレームの原因を追究する。
④上記3点を院内に公開する。
⑤改善策を検討し、実行する。
簡単に言えば、この5段階が「クレーム対応」の要素なのです。①と②だけではないのです。多くの人が①と②をクレーム対応であると誤解しています。しかし、本当のクレーム対応はそのあとからスタートするのです。特に③~⑤段階が非常に重要です。その改善に職員がかかわる事こそ「達成感」と「連帯感」が感じられるポイントなのです。
何故どうなのかを考察しましょう。
患者のクレーム(不平・不満)は、患者のなんらかの期待を裏切っていることが原因であると何度か言いました。実はその期待外れの状況は、患者だけでなく、患者に接している職員も同様に感じていることなのです。
私たちが「職員満足度を上げ、退職率を低下させたい」というご依頼をうけ、外部委員として出席しているある病院でこんなことがありました。
「患者さんからのクレームも少ないし、たくさんの検討事項がないのでは?」と言われました。そこで私たちは「では、皆さんが感じている患者さんの不便や、不満だなと感じること、現場で患者さんから言われて解決できたと感じる事柄を出してください」というと、翌月の委員会で、色々な事例が集まってきました。
つまり職員もまた不満に思ってはいるが、職員という立場が、それ等のことを封印させているのです。しかし、それらの想いは少しずつ灰汁のように発生し、やがてその灰汁は、ヘドロのように心の中にたまっていくのです。
職員の心の中に灰汁をためない、ヘドロ化する前に灰汁を取り除く作業こそが、クレーム対応の③④⑤のプロセスなのです。
そのプロセスを実行していく過程で、どのような効果が認められるかを次回考察します。