第1回
クレーム対応を科学する
前回のシリーズはクレームの性格と発生メカニズム、初期クレーム対応について説明いたしました。 今回のシリーズは、クレーム対応にうまく対応することで、考えられる病院の収益の変化や職員の退職率をどの程度低減することができるかを、考えたく思います。題して、いままで何となくしていたクレーム対応を、科学的に考察する「クレームを科学する」です。
私が医療機関にかかわりだして主に読んだ本には、以下のようなものがあります。
①サービスマネジメント カール・アルブレヒト、ロン・ゼンケ………ダイヤモンド社
②医療の質とサービス革命 ウェンディ・リーボフ、ゲイルスコット………日本医療企画
③真実の瞬間 ヤン・カールソン………ダイヤモンド社
④顧客満足ってなーに①② 佐藤友恭………日本経済新聞社
⑤顧客ロイヤリティ経営 佐藤友恭………日本経済新聞社
特に佐藤友恭先生には、私が最初に上梓した「病院のクレーム対応マニュアル」(ぱる出版)を書いていた際に直接お目にかかり、いろいろとご指導を受けました。
たまたま一緒に食事をしていただく機会があり「先生、何飲まれます?」と聞いたときに「僕佐藤だから、佐藤の白」と芋焼酎を注文されたことが、先生のほのぼのとされた優しいお人柄がしのばれました。
その時、私はグッドマンの法則についてご教授いただきました。第一法則、第二法則、第三法則の関係、そして、そもそもこの法則を発見したのは、グッドマン氏ではなく佐藤先生ご自身であることを知り、驚きながらとてもやさしく教えていただきました。
その時に「会社はだれのためになると思う?」という質問をされました。当時ホリエモンこと堀江貴文氏が時代の寵児となり、「株主優先」を主張されていた時でした。ちょっと考える時間をいただいたのですが、あまり満足いく回答が私から得られなかったのか、先生は私の顔を直視されて「会社は株主のためなんかではない、そこの従業員のためにあるんだよ」と言われました。「従業員が満足しなければ、顧客の満足はありえず、会社は収益を上げることができない。」と言われたことが今でも忘れられない強烈な印象に残っています。
さて、2019年に、ある病院グループの本部から「患者満足度調査」の設計のご依頼を受けました。改善策が明確にわかる調査設計をしてほしいというご依頼です。巨大な医療機関グループは、急性期から療養型まで患者の病状によっていろいろな形態の病院があり、なかなか手ごわい相手です。静岡大学の統計学の荒木先生を中心とする専門家と世界の一流ホテルの顧客調査をしてきたチームとプロジェクトを組んで今設計中です。
そんな中で私が口出しできずに、何かないかな?と本屋に行きマーケティングのコーナーを訪れました。役には立てないかもしれないが、専門家の言っていることは理解しておきたいという気持ちからでした。
そこで見つけた本が、このコラムを書くきっかけを作ってくれました。CX3.0という顧客体験の強化について書かれている本を見つけました。その著書がなんとあの「グッドマン」「ジョン・グッドマン」だったのです。
この本を読むにしたがって、自分たちがやってきたことの確認はもちろん、いろいろな新しい発見がありました。クレーム対応は、マーケティングの大きな要素であり、すべて合理的に説明できることを再確認しました。
従来のKKD(経験、勘、度胸)で行ってきたクレーム対応から、スマート対応のすすめ、そして改善できる満足度調査の考え方について、今回は考えてみます。ぜひご意見いただければと思っています。