第10回
グッドマンの法則2
今回は患者(直接顧客)について考えていきましょう。
前回ご紹介したグッドマン氏が行った調査をもとに考察します。
不満を持った顧客は、どうするのでしょうか?
あなたならどうします?少し考えてください。選択肢はさほど多くはありません。
① 不満を言う ②二度とその店には来ない ③我慢してその店に通い続ける。
さて、いかがでしょうか?おそらく②もしくは③を選択する方が多いと思います。実際の行動もそうでしょう。そして、①を選択した方はどのくらいいるでしょうか?
実際私の研修でも同じようなことを質問するのですが、多い順に③②①です。圧倒的に少ないのが①不満を言うでした。
グッドマン氏の調査によれば、不平を持っている人のうち75%から95%の人がそれを表明することなく、サービスを購入し続けているか、もしくは去っているのです。ある調査によれば立ち去っている人は20%程度とのことです。つまりほとんどの顧客が、不満を表明しないのです。
例えば上層部に届くクレームが1件としても、同じように感じている顧客は少なくとも100人います。その場合現場で、その顧客に対応するのはおそらく5件程度です。しかし、立ち去る患者は20人にも及ぶ可能性があります。以下の表のようになります。
同じような不満を持っている人 | 不満を表明する人 | 何も言わない人 | 立ち去る人 |
---|---|---|---|
100人 | 2~25人 | 75~98人 | 20~25人 |
医療機関では、患者の不満が顕在化する可能性(クレームを表明する)は、もっと少ないでしょう。この割合は医療機関の性格や位置づけによって変わります。その病院にしか行けない場合は、不満が顕在化したり、来なくなる患者数は少なくなる傾向にあります。つまり、我慢して来院する患者が多いのです。
周囲に同じような医療機関がある場合で、何の施策も打たない場合は、患者が減少している可能性が高いのです。これはサイレントクレーマーと言われている人たちで、医療機関の人が気づくことが少ないのです。
少なくなった原因を、天候や季節等の外部環境として考えることが多く、自分たちの問題としてあまり考えてこなかったからです。なぜならば、今の経営者の方々が育ってきた時代背景は、患者数が右肩上がりで増加してきたからです。しかし、今患者が病院を選ぶ時代に突入し、ますます、この傾向は強まると思います。
一方、患者に選択肢の少ない病院について考えます。ほとんどの患者が不満を表明することなく、我慢して来院しています。不満は「あきらめる」か「爆発するか」のどちらかなのです。爆発すると、我慢の期間が長ければ長いほど大きくなります。現場では対応できないハードクレームの出現です。それで済めばいいのですが、その場合医療事故、医療過誤の疑惑を含めた複合的な事例で発生します。その結果はどのようになるかは、マスコミやいろいろな事例でご承知のように、大きなイメージダウンや、最悪の場合は病院の閉鎖までの可能性も考えていかなければなりません。
患者の不満を放置していると、患者は減る、ハードクレームが発生するで、いいことは全くありません。
クレームがあまりないという病院経営者の方は、もう一度患者の数の変遷や現場での対応を見直してください。