第1回
患者目線とは何か?を考える
今回のシリーズは「患者の不平、不満、クレームをツールとした病院革命を起こす」というテーマで12回の連載をしていきます。
今年2月から始まった新型コロナの蔓延は止まるところか、第2波の始まりとも言われており、今後いつまで続くか終息の目処がつかない状況です。得体の知れない不安を抱えながらwithコロナの時代を過ごさざるを得ません。
外出自粛やリモートワーク等、従来の価値観とは違った生活習慣が求められるようになります。すべての人がその変化についていけるとは限りません。ついていけない人は知らず知らずのうちにストレスがたまる可能性もあります。多くの人は新しい流れに、何らかのストレスを絶えず感じるようになるかもしれません。
そのような環境下、医療機関で働く職員の皆さんも、ストレスを抱えながら仕事をしています。なるべくならば、自分が本来しなければならない仕事である、「治療や看護等の自分の専門分野」に集中したいと考える事でしょう。
職員と患者の気持ちが一致していれば、双方の不平や不満が生じる可能性は低いです。しかし、多くの場合は双方の気持ちに「ずれ」があります。この「ずれ」の大小によって不安が不満になり、不平になり「クレーム」に発展します。患者は客だから我慢しろ!という野暮なことは言いません。「ずれ」は、双方が歩み寄ることが理想です。しかし、現実は厳しいようです。患者から歩み寄ってくることを期待することは難しいと思います。よく言うじゃありませんか。「過去と他人を変えることはできない。変えることができるのは自分と未来だけだ。」
さあ、読んでくださっている皆さん、患者と継続的に笑顔で話せる未来をつくるために、ちょっと自分の目線を変えてみましょう。
最近こんなことがありました。
マスクをしていない患者が来院しました。職員がマスクをすることを促すと「こんな暑いのに熱中症になったらどうする。そもそもマスクの効用は怪しいとテレビで言っていたぞ。」と返されました。「マスクをする、しない」の押し問答で約30分。たまたま当社のコンサルタントがいたので対応をしたのですが、このような患者に対応する職員の気持ちはどうなのでしょうか?業務が停滞するだけでなく、対応する職員の気持ちも萎えてしまいます。
新型コロナ蔓延防止のために「院内でマスクをするのは常識」であるはずです。そして医療従事者は「患者がその常識に従うのは当たり前」と考えています。極端な例を挙げましたが、実は多くのクレームの原因はこのような患者と医療従事者の想いのギャップから発生するのです。病院の職員の皆さんは、目の前の患者のために、考えられる最善を尽くしています。そんな時に、患者から不平や不満を言われることは全く予測していないのです。ところが患者の気持ちは千差万別です。極論を言うと一人一人の感じ方が違います。病院に期待する事、我慢している事、100人いれば100通りの気持ちがあるのです。患者は、自分が快適かどうか?自分が安全であるかどうかが基準であり、それぞれに病院に対する期待があり、その期待と違うことが発生した場合、不平、不満、そしてクレームに発展していきます。
「患者目線」とは、患者の期待の許容範囲を予測して、その範囲を外さないように対応する事だと考えてください。今回のシリーズでは実例を交えながら、事前に患者の気持ちを考えて対策をどのように取っていけばよいかを皆さんと一緒に考えていきたいと思います。ぜひご意見を頂きたく思いますので、よろしくお願いいたします。