コラム

第9回
クレーム対応の方程式の前に

「クレーム対応が苦手である」『嫌である』という理由の一つに、対応の方法がわからないというものがあります。それはそうでしょう。頭の中が真っ白になって、相手の言うことが理解出来なくて、ぐるぐると相手の言う言葉が頭の中を回っているだけになるのですから。しかし、安心ください。
クレーム対応には方程式があります。その方程式をマスターすればほとんどのクレームには対応できます。
「本当?」という疑問の声も聞こえますが、あまり難しいことではありません。しかし、個人の力では限界があります。まず、院内でクレーム対応の流れを決めておく必要があります。たとえば、図を見てください。

これは、ある病院のクレーム対応のフローチャートです。院内の誰もが苦情を受けることが前提であり、スピーディな解決ができる事を目的としています。クレームを大きく2種類に分けています。オレンジの枠は、「Safety Management」下のグリーンの枠は「Crisis Management」と位置付けています。そのうえでクレームを以下の表のように3分類し、誰が解決するかを事前に決めています。

苦情の種類 対応者 方法
すぐに解決でき、対応できるもの クレームを受けた職員 話を聴き、担当科の上司に内容を報告する。
内容は正当であるが、解決に時間がかかるものあるいは要求が不当なもの 上司、もしくはあらかじめ決められた担当者 一次対応を受けた職員から報告を受け、対応して解決策を提案し、関係科に報告して迅速な改善をもとめる。
内容が不当で且つ要求も不当なもの 組織としてかかわる。対応する職員を決め、複数の科の責任者と検討する。 迅速な回答ではなく、事実を精査して、時間をかけて対等の立場で交渉する。

以上のような組織対応を事前に決めて置き、職員に周知させておかなければなりません。ところが多くの病院にはこの前提がありません。なんとなく事務長や看護部長の上司がこじれた場合、もしくは、言われた時にろくに担当者が話も聞かずに変わって対応します。その結果、「うちの職員はクレーム対応ができない」と個人の責任にしてしまいます。中には、クレーム対応は事務長の仕事で、事務長の腕の見せ所とまで豪語される方もいらっしゃいます。果たしてそうでしょうか?確かにクレーム対応は、経験と知識の蓄積が力になります。その事務長がいなくなればどうするのです?組織としてクレームに対応する仕組みつくりこそ大切なのです。