株式会社ウィ・キャン

カスタマーハラスメント白書 2025年度版

本白書は、当社が医療・介護・福祉分野におけるカスタマーハラスメント対応を支援する中で、相談業務を通じて得られたデータを基に、その傾向を分析したものです。

現場で日々発生するカスタマーハラスメントの課題について、組織としてどのように捉え、どのような対策を講じるべきかを明らかにするため、実態を整理し公表するものです。

本白書が、各機関におけるカスタマーハラスメント対策の推進に資する資料として活用されることを期待しています。

発行:株式会社ウィ・キャン / 発行日:2026年9月1日 / 対象期間:2025年4月〜2026年3月
巻頭

発刊にあたって

本白書を手に取ってくださり、ありがとうございます。

私たちの相談窓口には、医療・介護・看護・福祉の現場で働く方々から、日々多くの声が寄せられています。2025年度には、カスタマーハラスメントに関する相談が995件寄せられました。そこには、強い言動にさらされながらも、利用者のために職務を続けようとする職員の姿がありました。

同じ一年間で、医療機関に直接かかってきた患者・家族からの相談や問い合わせを、当社窓口が1,306件受け止めています。要領を得ない訴えや長時間の話し込みなど、本来の医療・介護とは関係のない電話が、現場の時間を奪ってしまうことがあります。窓口がこれを肩代わりすることで、職員が本来の業務に集中できる環境を守ることも、私たちの重要な役割です。こうした2,000件を超える声は、現場の負担が静かに積み重なっていることを示しています。

本白書は、これらの相談を単なる数字として扱うのではなく、そこにある構造と背景を社会に伝えるために作成しました。カスタマーハラスメントは、医療・介護・福祉だけの問題ではありません。行政、教育、民間企業など、あらゆる領域で同じ構造が起きています。だからこそ、本書は登録や有料の仕組みに閉じず、誰でも読める形で一般公開することにしました。多くの方に触れていただくことで、現場の実態を社会全体で共有し、対策の質を高める一助になればと願っています。

2026年10月には、カスタマーハラスメント対策が法的義務となります。これは、現場を守るための最低ラインが全国で共有される大きな節目です。本白書が、自治体や医療関係者だけでなく、企業や地域の皆さまが対策を進める際の「地図」として役立つことを期待しています。

職員を守ることは、利用者を守ることと矛盾しません。安心して働ける環境があってこそ、質の高い医療・介護が提供されます。私たちはこれからも相談窓口の運営と分析を通じて、現場の変化を捉え続け、その声を社会に届けてまいります。

株式会社ウィ・キャン
代表取締役 濱川 博招

第1部

カスタマーハラスメントを取り巻く社会状況

カスタマーハラスメント(以下カスハラ)への対応は、事業者の裁量に委ねられた問題から、法が求める義務へと変わりました。

1-1 データが示すカスタマーハラスメントの広がり

カスタマーハラスメントは、特定の業種や地域に限られた問題ではなく、広く社会全体で顕在化しつつあります。

厚生労働省が公表した「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査」(2024年5月公表、企業7,780件・労働者8,000名が回答)によれば、過去3年間にカスタマーハラスメントに関する相談があったと回答した企業は 27.9% にのぼります。これは前回調査(令和2年度)の 19.5% から 8.4ポイント増加 しており、調査対象となったハラスメントの中でも特に高い伸びを示しています。

では、企業が相談を受けた「著しい迷惑行為」とは具体的にどのような内容なのか。

同調査では、実際に被害を受けた労働者が次のような行為を挙げています。

図 1顧客等からの著しい迷惑行為の内容(複数回答)
継続的・執拗な言動 威圧的な言動 精神的な攻撃 業務と関係のない言動 拘束的な言動 身体的攻撃 57.3% 50.2% 33.1% 21.7% 15.8% 5.9%

出典:厚生労働省「令和5年度 職場のハラスメントに関する実態調査 結果概要」(2024年5月)。過去3年間に顧客等からの著しい迷惑行為を受けた経験があると回答した労働者(n=861)による複数回答。

最も多いのは 「継続的な、執拗な言動」(57.3%)、次いで 「威圧的な言動」(50.2%) です。

この結果が示しているのは、カスタマーハラスメントの中心にあるのが、単発の激しい言動ではなく、繰り返され、積み重なっていく継続的な言動であるという点です。危険は、表面化しないまま徐々に積み重なっていきます。後段で取り上げる相談事例も、同様の傾向を示しています。

「顧客等」には、患者・その家族が含まれます

同調査は、迷惑行為の行為者の82.3%が「患者またはその家族」であったと報告しています。調査は全業種を対象としたものですが、その定義にはっきりと患者・家族が含まれている点は、医療・介護の現場にとって見過ごせません。次節以降で、この領域に固有の事情を見ていきます。

1-2 2026年10月1日、カスハラ対策は法的義務になる

2025年6月11日、「労働施策の総合的な推進並びに労働者の雇用の安定及び職業生活の充実等に関する法律等の一部を改正する法律」(令和7年法律第63号)が公布されました。この改正により、事業主にはカスハラ対策を講じる義務が課されることになります。施行日は2026年10月1日です。

重要なのは、この義務に企業規模による猶予が設けられていないことです。従業員を雇用するすべての事業主が対象となります。医療機関も、介護事業所も、規模の大小を問わず、この日までに体制を整えなければなりません。

本書を刊行する時点で、施行まで残された時間はわずかです

2026年10月1日という施行期日はすでに確定しています。

現場を抱える組織にとって、いま問われているのは「対応するかどうか」ではなく、どのような体制を、どの水準まで整備すれば法令上求められる要件を満たすのかという点です。

1-3 国が示した「事業主が講ずべき措置」

2026年2月26日、厚生労働省は「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号)を公布しました。事業主が具体的に何をすべきかを示すものです。

指針が求める措置は、大きく次のように整理できます。

表 1事業主に求められる主な措置(厚生労働省告示第51号に基づく整理)
措置内容
方針の明確化と周知カスハラを職場において生じさせてはならないという方針を明確に示し、従業員および顧客等に対して周知・啓発する。
相談窓口の設置相談に応じるための窓口を設置し、従業員へ周知する。既存のハラスメント相談窓口と統合することも可能とされる。
対応マニュアルの整備具体的な対応方法をあらかじめ定める。管理職への報告体制、一人で対応させない体制、録音・録画の活用などが含まれる。
事後の対応発生時に、事実関係の迅速な確認、被害を受けた従業員への配慮(担当の変更等)、再発防止に向けた措置を行う。

出典:厚生労働省「事業主が職場における顧客等の言動に起因する問題に関して雇用管理上講ずべき措置等についての指針」(令和8年厚生労働省告示第51号、2026年2月26日公布)に基づき当社にて整理して作成。

ここで留意すべき点は、指針が求めている措置の性質です。「一人で対応させない」「記録を残す」「事実関係を確認する」「担当を変更する」といった内容は、いずれも個々の職員の努力や心構えに委ねるものではありません。組織として仕組みを整備し、運用することを前提とした措置です。

本書第3部で示すとおり、当社の窓口に寄せられる相談の多くは、まさにこの「組織としての備え」が十分に機能しなかった場合に深刻化する傾向があります。法が求める措置と、現場で実際に必要とされている対応は、きわめて高い一致を示しています。

1-4 各自治体の動き

国による義務化に先立ち、各自治体は条例を施行しはじめています。 2025年4月に最初の条例が施行されてから、その動きは各地に広がっています。

先頭を切ったのは東京都です。2024年10月に「東京都カスタマー・ハラスメント防止条例」を制定し、 2025年4月1日から施行しました。業種を限定しない条例としては、全国で初めてのものです。 罰則は設けられていませんが、カスハラを「してはならない行為」として公的に位置づけた点に意味があります。 同じ日に、北海道と群馬県でも条例が施行されました。

表 2カスタマーハラスメントの防止に関する条例(都道府県)
自治体施行特徴
東京都2025年4月1日業種を限定しない条例として全国初。罰則は設けず、「してはならない行為」と明示
北海道2025年4月1日東京都と同日に施行
群馬県2025年4月1日同上
愛知県2025年10月1日都道府県として4例目。カスハラの禁止と各主体の責務を定め、罰則は設けず
静岡県2026年4月1日2025年10月17日に公布
栃木県2026年4月1日2026年3月19日に公布
埼玉県2026年7月1日事業者に加え、個人事業主・ボランティア団体・町内会も対象に含める

条例の動きは市区町村にも広がっています。

なかでも三重県桑名市は、警告を経ても改善が見られない場合に行為者の氏名を公表できる規定を全国で初めて設け、2025年4月1日に施行しました。このほか、群馬県嬬恋村・中之条町、静岡県長泉町、茨城県城里町、島根県美郷町、岡山県岡山市など、複数の自治体で条例が施行されています。

これらの条例はいずれも、行為者を直接罰する規定は設けていません。その一線を越えようとしているのが三重県です。県は罰則を伴う条例の最終案をまとめ、2026年9月の県議会に提出する見通しです。案では、事業者からの申出を受けた知事が専門家による審査会に諮ったうえで行為者に禁止命令を出し、命令に従わない場合には50万円以下の罰金等を科すとしています。可決されれば全国初の罰則付き条例となり、2027年4月の施行が見込まれています。

条例という形式を取らずに取り組みを進めている自治体もあります。神奈川県は条例を制定していませんが、県・労働団体・経営者団体など8団体が共同で「STOP!カスハラ!!かながわ宣言」を行い、社会的機運の醸成に取り組んでいます。2025年3月には、県職員を対象としたカスタマーハラスメント対策も開始しました。

このように、条例のある地域とない地域、罰則のある条例とない条例が存在し、現時点では働く地域によって守られ方に差異が生じています。

2026年10月の法改正は、この地域差を是正し、全国共通の最低基準を確立するものです。

1-5 医療・介護現場に特有の構造的問題

カスタマーハラスメントは多様な業種で課題となっています。しかし、医療・介護の現場で生じる、患者や家族による暴言・暴力・威嚇・執拗な要求などの行為には、他の業種にはない固有のリスク要因が内在しています。

表 3医療・介護現場に特有の構造的問題
問題内容
サービスを止められない相手は治療やケアを必要としている。他の業種であれば「お断りする」という選択肢があるが、医療・介護では容易に採れない
相手の背景に事情がある不安、痛み、疾患、介護疲れ。強い言動の背景に理解すべき事情があることが多く、職員は「線を引くこと」に強いためらいを抱く
閉じた空間で、一人で向き合うとりわけ在宅では、職員は利用者や家族の生活空間へ単独で入っていく。第三者の目がなく、助けを呼ぶこともできない
「利用者のために」が我慢を促す職員の使命感が、危険を受け入れる方向に働いてしまう。危険は「耐えるべきもの」として個人に抱え込まれ、組織に共有されない

これらの問題を無視してカスハラ対策を行えば、職員の離職や業務の停滞を招き、地域の医療・介護サービス全体の質が低下します。それは、ハラスメントを行った当人自身の受けるサービスにも影響します。職員を守ることと利用者を守ることは、同じ目的の異なる側面です。

1-6 実効性あるカスハラ対策に必要な視点

法が義務を定め、条例が線を引き、指針が講ずべき措置を示しました。制度的な枠組みは整いつつあります。しかし、枠組みが整備されたとしても、それだけで現場が自律的に動き出すわけではありません。

相談窓口を設けるとして、そこにはどのような相談が寄せられるのか。「一人で対応させない体制」とは、具体的にどの場面で必要となるのか。どの段階で組織が介入すれば対応が間に合い、どの時点を過ぎると深刻化してしまうのか。これらの問いに答えるためには、制度の条文だけでは不十分であり、現場で実際に何が起きているのかを把握することが不可欠です。

当社は、医療・介護・看護・福祉の現場から寄せられる相談を受ける窓口を運営しています。本書で以降に報告するのは、その窓口に寄せられた相談の記録です。2026年10月1日の法施行に向けて体制整備を進める自治体・医療関係機関の皆さまにとって、現場の実態に基づき、実効性のある対策を設計するための材料となることを目的としています。

第2部

相談窓口データ分析編

本書が対象とするのは、2025年度(2025年4月〜2026年3月)に当社の相談窓口へ寄せられた相談データです。この期間は、カスハラへの関心が高まり、企業や医療機関など多様な事業者で対策の検討が進んだ時期でもあります。

当社では、医療・介護・福祉の現場支援を通じて寄せられた相談内容を継続的に記録しており、本書の分析はその蓄積データを基盤としています。今回の分析対象は、患者・家族等からの相談1,306件と、医療・介護・福祉の従事者からの相談995件の計 2,301件です。

本書では、こうした相談を性質ごとに整理し、現場でどのような相談が生じていたのか、その傾向を明らかにしています。第2部以降では、この1年間に寄せられた具体的な相談内容とその特徴を示し、カスハラの実態をより詳細に分析してまいります。

1,306件 患者・家族等からの相談
995件 医療・介護・福祉従事者からの相談
2,301件 対応した相談合計

2-1 患者・家族等からの相談分析

医療・介護・福祉の現場では、患者や家族から寄せられる相談は多様であり、その背景や目的も大きく異なります。本章では、現場に寄せられた相談の内容を整理し、正当な改善要望としてのクレームと、対応が困難となる無理な要求の二つの側面から傾向を分析します。これにより、現場で生じている課題の特徴と、組織として向き合うべきポイントを明らかにします。

2-1-1 患者・家族等の相談にみる正当な要望と過度な要求の分岐点

患者・家族等から寄せられた1,306件の相談を分類した結果、最も多かったのはカスハラに該当する相談で41.0%を占めました。医療機関に対する暴言、威圧的な態度、過度な要求など、職員の心理的負担を伴う事例が多数確認されております。

次いで、症状等の相談が18.4%と高い割合を示しました。これは、医療制度や手続きよりも、相談者ご自身やご家族の身体状態・治療内容に関する不安が強いことを反映しているものと考えられます。

また、正当な改善要望としてのクレームは10.4%、問い合わせが15.9%、その他が14.2%となっており、医療制度の複雑さや地域医療連携の不明瞭さが相談増加の一因となっていることが示唆されました。

図 2ハラスメント行為者の属性(n= 1,306)
カスハラ 症状等の相談 問い合わせ その他 クレーム 536件(41.0%) 240件(18.4%) 208件(15.9%) 186件(14.2%) 136件(10.4%)

2-1-2 分類別の相談内容の特徴

(1)カスハラ(41.0%)

カスハラに該当する相談は全体の約4割を占めており、医療現場における深刻な課題として浮き彫りになっています。

主な内容としては、

などが挙げられます。これらの事例は、職員の安全確保や心理的負担軽減のための体制整備が求められる領域です。

(2)症状等の相談(18.4%)

相談者ご自身やご家族の身体状態、治療内容への不安が中心であり、切迫した状況での相談が多く寄せられています。

相談例

医療機関からの説明が十分でない場合や、治療選択に関する情報提供が不足している場合に相談が発生していると考えられます。

(3)正当な改善要望としてのクレーム(10.4%)

サービスの質や対応に関する建設的な改善要望が一定数確認されました。

主な内容は、

などであり、組織改善につながる重要なフィードバックとして位置づけられます。

(4)問い合わせ(15.9%)

問い合わせの内容は、医療制度や事務手続きに関する照会が多く、制度の複雑さが相談増加の一因となっていることがうかがえます。

相談例

医療機関の案内機能や地域連携の強化が求められる領域です。

2-1-3 相談対応の負荷と削減効果

当社に寄せられる相談には、本来業務とは直接関連しない内容や、制度・法律への批判、さらには感情的な訴えなど、一般の職員では対応が困難な内容が多数含まれていました。1,306件の相談のうち約5割はクレームやカスタマーハラスメントに該当し、現場側が対応しても解決に至らないケースが多く、結果として職員の業務効率を大きく損なう要因となっていました。

当社の試算では、職員がこれらの相談に対応した場合、1件あたり約30分、年間636時間の負荷が生じるとされています。しかし、現場の実感としては、実際の対応時間は年間約1,000時間に達していたと推測されます。この1,000時間という数字は、職員1名の年間労働時間(約2,000時間)の50%に相当し、実質的に「0.5人分の人件費が対応に吸収されていた」状態であったと評価できます。

特に、制度批判や感情的訴え、クレーム・カスハラに該当する相談は、職員が対応しても解決に結びつかない内容が多く、対応効率の面だけでなく、対応者の心理的負担も大きいものでした。これらの相談は、現場の専門性とは異なる領域の対応を求めるものであり、職員の精神的負担を増大させる要因にもなっていました。

当社が相談窓口としてこれらの対応を担ったことにより、職員が対応に追われる状況はほぼ解消されました。その結果、年間1,000時間の業務負荷が削減され、職員の精神的負担が大幅に軽減しました。さらに、本来業務への集中が可能となったことで業務効率が向上し、他の利用者・家族への対応品質も改善しました。こうした変化は職員のモチベーション向上にもつながり、組織全体のサービス品質向上に寄与しています。

特に、年間1,000時間の削減効果は、単なる効率化にとどまらず、組織全体のサービス品質向上と職員の健康保持に直結する重要な成果であると評価できます。

2-1-4 相談件数の月別推移と季節性の分析

患者・家族等からの相談件数は、年間を通じて一定の波があり、特に新年度の環境変化が続く6月にピークを迎えました。相談件数の増減には、医療・介護・福祉の現場で一般的に指摘されている要因が影響していると考えられます。

新年度の環境変化が続く4〜6月は、担当者変更や生活リズムの変化が重なり、不安が高まりやすい時期であることから相談件数が増加する傾向があります。

また、季節ごとの体調変化は症状相談の増減に影響し、秋から冬にかけては体調不良が増える一方で生活リズムが安定するため、相談件数が中程度で推移する傾向が見られます。

図 3月別の相談件数(n=1,306)
108 4月 116 5月 144 6月 122 7月 93 8月 110 9月 123 10月 95 11月 106 12月 94 1月 97 2月 98 3月

2-1-5 患者・家族等からの相談への対応、現場を守る、もう一つの役割

患者・家族等から寄せられる相談には、サービス改善につながる正当な要望だけでなく、現場の負担となる過度な要求も含まれています。

今回の分析は、当社の相談窓口に寄せられた1,306件の相談を対象としており、カスハラに該当する相談が41.0%と高い割合を占めました。これにより、現場職員の心理的負担や業務への影響が顕在化していることが確認されました。

一方で、症状等の相談が18.4%、正当な改善要望が10.4%、制度や手続きに関する問い合わせが15.9%と、相談内容は多様であり、現場には幅広い性質の相談が寄せられています。

また、相談件数は、新年度の環境変化が続く6月にピークを迎え、家族の在宅時間が増える8月や1月には減少するなど、季節性や生活リズムが相談行動に影響していることも明らかになりました。

こうした相談への対応は、単なる苦情処理ではなく、正当な要望を適切に受け止めつつ、過度な要求から現場を守るための重要な役割を担っています。組織として対応の分岐点を見極め、方針を整備することが、現場の安全と働きやすさを支える基盤となります。

2-2 医療・介護・福祉従事者からの相談分析

2-2-1 カスハラを行っているのは誰か

今回の分析では、カスハラに該当する995件の相談のうち、行為者が判明している479件を対象として属性を整理しました。その結果、以下の傾向が確認されました。

図 4カスハラ行為者の属性(n=479)
利用者本人 利用者の子 利用者の配偶者 利用者の親・兄弟 237件(49.5%) 171件(35.7%) 46件(9.6%) 25件(5.2%)

2-2-2 行為者の多くは「利用者本人または近い家族」

行為者属性の分析から、カスハラの多くは、利用者本人(49.5%)とその子(35.7%)という「最も近い関係性の家族」によって生じていることが明らかになりました。

医療・介護・福祉の現場では、本人の不安や家族の心配が強い場面ほど、要求が過度になりやすく、職員への心理的負担が高まる傾向が見られます。

この結果は、

の必要性を示しています。

行為者属性の把握は、現場を守るための対策を検討するうえで重要な視点となり、相談対応の質向上や職員の安全確保に寄与するものです。

2-2-3 相談する側・カスハラ行為者側を、性別で見る

相談データ995件のうち性別が判明している879件を対象に相談者の性別構成を確認したところ、男性(44.5%)、女性(55.5%)となり、相談者全体では女性がやや多い傾向が見られました。

一方、カスハラ行為者の性別が判明している 459件 を対象に構成を整理したところ、男性(54.5%)、女性(45.5%)となり、相談者全体の性別構成とは異なる傾向が確認されました。

相談者では女性が多いにもかかわらず、行為者として判明したケースでは男性が過半数を占めています。この違いは、相談内容の性質、相談行動の背景、家族内での役割分担など複数の要因が影響している可能性があります。

なお、本分析は性別による行為の特徴を一般化するものではなく、あくまで当社に寄せられた相談データに基づく傾向を示したものです。

図 5相談者・行為者の性別
相談者 n=879 男性 44.5% 女性 55.5% 行為者 n=459 男性 54.5% 女性 45.5%
「女性の職員が、男性から受ける」だけではありません

医療・介護・福祉の現場は女性の職員が多い現場であり、相談者に女性が多いのはその反映でもあります。一方で、加害する側も、男性・女性の双方に及んでいます。性別による極端な偏りがあるわけではなく、誰もが被害者にも、対応の当事者にもなりうるのが、この問題の実態です。

2-2-4 どこで起きているのか

行為が発生した場所は、自施設が39.8%、利用者・患者の自宅が29.2%でした。施設内だけでなく、3割近くが訪問先という「閉じた空間」で起きています。第1部で述べたとおり、訪問先では職員が単独で対応せざるを得ない場面が生まれやすく、助けを呼ぶことも困難です。

2-2-5 どのような行為が行われているのか

医療・介護・福祉の職員から寄せられたカスハラ相談995件を内容別に整理したところ、以下の傾向が確認されました。

暴言(42.5%)

最も多く、全体の4割以上を占めています。職員への人格否定、威圧的な言動、強い口調による叱責など、感情の高まりが直接的に表出するケースが多く見られました。

不当な要求(30.5%)

制度外の対応要求、他利用者より優先するよう求める行為、過度な説明要求など、業務の範囲を逸脱した要求が一定の割合を占めています。現場の業務妨害につながるケースも少なくありません。

セクハラ(8.1%)

身体的接触の試み、性的な発言、性的役割を押し付ける言動など、職員の尊厳を損なう行為が確認されています。相談件数としては多くないものの、深刻度が高い内容です。

違法行為「殴る・蹴る等」(4.2%)

身体的暴力を伴う行為が一定数存在し、職員の安全確保が喫緊の課題であることが示されています。

その他(14.7%)

長時間の拘束、執拗な電話、SNSでの誹謗中傷、家族間トラブルの巻き込みなど、多様なハラスメント行為が含まれています。

図 6ハラスメント行為の内容(n=995)
暴言 不当な要求 その他 セクハラ 違法行為(殴る・蹴る等) 423件(42.5%) 303件(30.5%) 146件(14.7%) 81件(8.1%) 42件(4.2%)

今回の分析から、暴言(42.5%)と不当な要求(30.5%)が全体の7割以上を占めることが明らかになりました。医療・介護・福祉の現場では、利用者本人や家族の不安・焦り・怒りが強く表出する場面が多く、言動の激化や制度外要求につながりやすい構造があると考えられます。

また、セクハラや暴力行為など、職員の安全と尊厳を脅かす深刻な相談も一定数存在しており、組織としての対応方針や安全確保の仕組みが不可欠であることが示されています。

2-2-6 相談時間の分析

2025年度に寄せられた995件の相談について、相談内容と相談時間の両面から分析を行いました。相談件数の集計とは異なり、「そこで何が語られたのか」や「どれほどの時間を要したのか」を読み取るためには、相談内容そのものを精査する必要があります。本書では、この995件の相談記録を手がかりに、相談がどのように進行し、どの段階で負荷が高まり、どのような構造で深刻化していくのかを明らかにします。

995件 内容を分析した相談
27.3分 1件あたり平均相談時間
120分 最長の相談

相談時間が30分を超えるということは、相談員が30分以上にわたり現場の苦痛や負荷を受け止め続けていることを意味します。そして、相談として窓口に持ち込まれる時点では、現場ではすでにそれ以上の時間にわたる事態が進行していると考えられます。

相談件数の多寡だけでは、現場で生じている負荷の大きさや複雑性を十分に把握することはできません。1件あたりの相談時間は、現場の実態を示す重要な指標です。

今回の分析では、相談時間が判明している978件の平均相談時間は27.3分でした。内訳を見ると、10〜30分の相談が最も多く52.3%を占め、次いで30〜60分が36.0%となっています。すなわち、全体の約9割が10〜60分の範囲に収まっており、相談の多くが短時間では終わらない内容であることが明らかです。

さらに、30分を超える相談は381件(38.3%)に達し、相談員が長時間にわたり負荷を受け止め続けている実態が確認されました。60分以上の相談は2.3%と少数ではあるものの、最長の相談は2時間に及んでおり、個人対応では限界が生じる事例が存在することが示されています。件数以上に現場の実態を語るのが、1件あたりの相談時間です。平均相談時間は27.3分。4割弱にあたる381件(38.3%)が30分を超え、最長の相談時間は2時間に及びました。

図 7相談時間分布(n=995)
〜10分 10〜30分 30〜60分 60〜90分 90分〜 94件(9.4%) 520件(52.3%) 358件(36.0%) 21件(2.1%) 2件(0.2%)

2-2-7 相談時間と危険度の関係

相談時間は、相談の複雑性や深刻度を反映する重要な指標です。今回の分析では、995件を対象に、危険度の3段階(危険度1:違和感初期、危険度2:負荷の集中、危険度3:組織介入が必須)との関係を整理しました。

表 4危険度スケール
危険度段階状態必要な対応
危険度1違和感 / 初期曖昧で記録に残りにくい「気配」。声のトーンがわずかに強い、空気が少し重い、特定の職員にだけ反応が変わるここで気づけるかが分岐点。記録化
危険度2負荷の集中 / 中期危険が「人」に寄っていく。長く接する職種に圧が寄り、要求が増え、職員が「今日は大丈夫か」と感じ始める情報共有・対応の統一・同行訪問
危険度3組織介入が必須 / 後期個人では支えきれない。強い言動が繰り返され、情報が分断され、職員が恐怖や無力感を抱く「組織の盾」が不可欠。担当変更・複数名訪問・契約見直し

(1)危険度別の相談件数の概要

今回の分析では、995件の相談について危険度の3段階(危険度1:違和感初期、危険度2:負荷の集中、危険度3:組織介入が必須)に基づき分類をしました。その結果、危険度3が最も多く677件(68.0%)を占め、次いで危険度2が238件(23.9%)、危険度1が80件(8.0%)となりました。

危険度3が全体の約7割を占めていることは、相談として窓口に持ち込まれる時点で、すでに個人対応では支えきれない段階に達している事例が多数存在することを示しています。強い言動の反復、説明しても納得が得られない状況、複数職員が巻き込まれる情報分断など、組織的な介入が不可欠となる構造が固定化しているケースが多いと考えられます。

危険度2は約24%であり、特定の職員に負荷が集中し始める段階に該当します。要求の増加、接触頻度の上昇、職員が身構える状況など、行為が「人」に寄り始める特徴が確認されました。この段階で適切に介入することができれば、危険度3への進行を防ぐ可能性があります。

危険度1は8%と少数であり、記録に残りにくい違和感や初期の兆候が中心です。声のトーンの変化、反応の偏り、空気の重さなど、行為として明確に捉えにくいが、後に行為が強まる前段階として現れることが多いと考えられます。早期把握ができれば、負荷の集中や構造の固定化を防ぐことが可能となります。

以上の結果から、相談窓口に寄せられる相談の多くは、すでに深刻化した段階に達していることが明らかです。危険度3が高い割合を占めることは、現場の負荷が個人の努力では解消できない構造的課題であることを示しており、組織的な対応方針や支援体制の整備が不可欠です。

図 8危険度分布(n=995)
n=995 68.0% 23.9% 危険度3 68.0% 危険度2 23.9% 危険度1 8.0%

(2)危険度分布が示す構造的な異常性

危険度1(違和感初期)の相談は全体の8%にとどまりました。これは、危険度1の段階では相談に至らないことを示しています。違和感は記録にも残りにくく、相談にもつながりません。そのため、危険が「相談」という形で表に出てくるころには、多くの事例がすでに危険度2や危険度3へと進行しています。

本書が分析できたのは、相談として表面化した事例のみです。その水面下では、数多くの「違和感」が誰にも共有されないまま静かに積み上がっています。これらは記録にも残らず、相談にも至らず、気づかれないまま危険度3へと育っていく可能性があります。

医療安全の分野で知られるハインリッヒの法則では、危険は本来「ピラミッド型」で現れるとされています。「1件の重大事故」「その背後にある多数の中程度の事案」「さらにその下にある大量の「ヒヤリ」とする予兆」下にいくほど数が増える、裾野の広い三角形です。

本書が相談データから見た形は、このピラミッドとは逆でした。

危険度3:約7割(68%)

危険度2:約24%

危険度1:わずか8%

本来いちばん数が多いはずの「予兆」が、もっとも少なく、ほとんど見えていないのです。

危険度1が少ない理由は、予兆が少ないからではありません。

予兆の段階では誰も危険と気づけない

記録されない

相談にも至らない

そのまま静かに危険度3へと育つ、この構造のほうが自然です。

逆さまの三角形の頂点のさらに上には、現実に起きてしまった重大な事態があります。危険度3とその一線を分けるのは、「越えてしまったかどうか」という紙一重です。この結果は、相談窓口に寄せられる相談が、すでに深刻化した段階に達していることを強く示しています。

図 9本来のかたちと、本書が見たかたち(n=995)
ハインリッヒの法則 当社の危険分布 重大事案 中程度の事案 予兆・ひやり 重大事案 危険度3 68% 危険度2 23.9% 危険度1 8%

今回の危険度分布は、現場で起きている危険が「予兆の段階では見えず、深刻化してから表面化する」という構造的特徴を示しています。相談として寄せられた事例の多くが危険度3に達していることは、現場の負荷が個人の努力では解消できない段階にあることを意味し、早期の兆候把握と組織的な支援体制の整備が不可欠です。

(3)深刻化した相談の構造と潜在的発生件数

危険度2(238件)および危険度3(677件)は、合計で915件となり、全体の約92%を占めています。これらは、個人対応では収束が困難となった段階の相談であり、いわば「深刻化した事例群」と位置づけられます。

また、幸いなことに相談事例の中では、重大な事故や事件につながった事例は確認されておらず、危険度2・3はハインリッヒの法則における「中程度の事例」に相当すると考えられます。同法則では、重大事例の背後に多数の中程度事例・軽微事例が存在することが示されており、深刻化した事例群は氷山の一部に過ぎない可能性があります。

危険度3(677件)を中程度の事例に相当する層として捉え、同法則の比率(1:29:300)を当てはめると、その背後にある軽微な事例・未相談の事例は約7,000件と算出されます。これに、記録に残らない軽微な対応、職員が「相談に至らない」と判断した事例、組織内で処理されて窓口に上がってこない事例を加えると、現場が実際に対応しているカスタマーハラスメント事案は、少なくとも約7,000件、実際には年間1万件規模に達しているものと考えられます。なお、ハインリッヒの法則の比率はあくまで目安であり、ここでの件数も概数としてお読みください。

この推計は、深刻化した相談件数(667件)とその構造的特徴、危険度3の高い比率、相談時間との相関、そしてハインリッヒの法則が示す事例分布を踏まえたものであり、現場での発生件数が相談窓口に寄せられる件数を大きく上回ることを示唆しています。

図 10相談時間帯別に見た危険度3の割合(n=995)
25% 10分未満 64% 10〜30分 83% 30〜60分 100% 60分以上
第3部

類型別分析・事例編

第3部では、相談を「何をされたか」と「なぜ止まらないのか」という2つの軸から分析します。相談で語られる行為は、暴言、不当要求、長時間拘束、セクハラなど、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の9類型に沿って整理することができます。

しかし、行為そのものだけでは、相談がどのように深まり、なぜ繰り返され、どの段階で職員や組織に負荷が集中するのかを十分に理解することはできません。

そこで本書では、行為の分類に加えて、行為が止まらない理由や背景を読み解くための「構造の分類」を用います。構造分析では、本人や家族の不安、制度の複雑さ、訪問先という環境、特定職員への負荷集中、説明の分断など、行為の裏側で重なり合う要因を明らかにします。

行為と構造の両面から相談を分析することで、表面に現れた出来事だけでは捉えきれない「深まりのプロセス」が見えてきます。本章では、この2つのものさしを用いて、代表的な相談事例を構造から読み解き、現場で起きている事態の実態を明らかにします。

3-1 構造分析の方法とその意義

3-2 本書が用いる2つの「ものさし」を使った構造分析

相談の中身を分析するにあたり、本書は2つの異なる「ものさし」を用います。「何をされたのか」を測る行為の分類と、「なぜ、それが止まらないのか」を測る構造の分類です。行為の分類には、厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の9類型を用います。公的な枠組みに沿うことで、他の調査や各自治体の対応指針と照らし合わせて読むことができます。それぞれの類型が指す行為は、次のとおりです。

表 5行為の分類 ― 何をされたのか(厚生労働省の9類型)
類型指す行為
長時間拘束型長時間の電話や居座りにより、対応する職員を長時間拘束する
リピート型理不尽な要望について、繰り返し電話・問い合わせをする、または面会を求める
暴言型大きな怒鳴り声、「馬鹿」などの侮辱的発言、人格の否定や名誉を毀損する発言をする
暴力型殴る・蹴る・たたく、物を投げつける、わざとぶつかる等の身体的な加害を行う
威嚇・脅迫型「殺すぞ」等の脅迫的発言、反社会的勢力とのつながりの示唆、異常な接近など、職員を怖がらせる
権威型優越的な立場を背景に、不当な要求や特別扱い、謝罪などを強要する(いわゆる「不当なクレーム」を含む)
事業所外拘束型事業所の外や自宅などへ職員を呼び出す、待ち伏せる、押しかける
SNS・インターネット上での誹謗中傷型インターネット上での誹謗中傷、事実と異なる書き込み、個人情報の暴露
セクシュアルハラスメント型性的な言動、不必要な身体接触、私的な関係の要求

厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」(令和4年2月)の類型に基づき、当社にて整理。

しかし、現場が本当に苦しむのは、行為そのものよりも、それが「止まらない」ことです。なぜ止まらないのかその構造を捉えるのが、もう一つのものさしです。本書では、当社がメールマガジン連載・小冊子で用いてきた6つの類型を、その枠組みとして用います。

表 6なぜ、それが止まらないのか(当社6類型)
類型構造の要点
契約外要求 / 境界線の逸脱「ついでにこれもお願い」の小さな依頼が積み上がり、境界線が曖昧になる。「前の人はやってくれた」が典型的なサイン
過度な管理・監視 / コントロール欲求家族の不安が「管理行動」として表出する。記録・監視・評価がセットで現れ、職員が萎縮する
圧の偏り / 特定職員への圧の集中「あなたのときだけ」「前の人は良かった」。優しい・断れない職員に攻撃が固定化する
暴言・セクハラ / 支配欲と境界崩壊言葉や性的言動によって境界が崩れている状態。「冗談」「悪気はない」は責任回避の典型
感情の揺れ・境界の曖昧化 / 境界線の揺らぎ構造褒める・責めるが交互に起き、職員が心理的に巻き込まれる。最も見落とされやすい
情報分断 / 組織の盲点危険は現場に集中しているのに情報は多職種に分散し、誰も全体像を把握できない

3-3 何をされ、なぜ止まらないのか―2つの軸で見る

次に、相談の中身を2つのものさしで見ていきます。まず「何をされたのか」(行為)です。

図 11行為の分類(厚労省9類型準拠・主たる行為・n=995)
暴言型 リピート型 その他 威嚇・脅迫型 権威型 暴力型 長時間拘束型 セクハラ型 36.2% 18.9% 14.4% 8.3% 6.4% 5.7% 5.4% 4.7%

出典:厚生労働省「カスタマーハラスメント対策企業マニュアル」の類型に準拠。

最も多いのは暴言型(36.2%)、次いでリピート型(18.9%)です。第1部に記載した国の調査(継続的・執拗な言動が最多)と同じく、怒鳴りや侮辱、そして「繰り返される」ことが、現場を最も苦しめていることがわかります。

では、それが「なぜ止まらないのか」。もう一つのものさしで見ると、別の景色が見えてきます。

図 12構造の分類(なぜ止まらないのか・主たる構造・n=995)
契約外要求 暴言・セクハラ 情報分断 圧の偏り 該当なし 過度な管理・監視 感情の揺れ 34.0% 20.1% 15.6% 12.5% 8.3% 7.6% 1.9%

構造で見ると、最も多いのは「契約外要求(境界線の逸脱)」(34.0%)でした。さらに情報分断(15.6%)や圧の偏り(12.5%)が続きます。これらは、行為の分類には現れない、「組織の側の問題」です。

2つの軸を掛け合わせると、打ち手が変わる

この2つのものさしを掛け合わせると、本書ならではの視点が見えてきます。たとえば同じ「暴言型」の相談でも、その背後にある構造はさまざまです。

表 7「暴言型」の背後にある構造(暴言型を主たる行為とする相談の内訳)(n=360)
背後の構造件数意味と打ち手
暴言・セクハラ125境界そのものが崩れている。組織として明確に線を引く
契約外要求101要求が通らない苛立ちが暴言に。境界の再設定が本質的な打ち手
圧の偏り64特定職員に暴言が集中している。担当変更が正しい対応
情報分断49暴言が組織に共有されていない。まず記録と共有から
不明21

「暴言をやめさせる」だけでは、解決しません

同じ暴言でも、背後の構造が違えば、有効な打ち手は変わります。契約外要求が背後にあるなら「境界の再設定」、圧の偏りなら「担当変更」、情報分断なら「記録と共有」。行為だけを見て「暴言をやめさせよう」とするだけでは、構造が残る限り、形を変えて再発します。

だからこそ、対応は個人の努力ではなく、構造に手を打つ組織の仕組みでなければなりません。

3-4 事例研究 ― 数字の向こうにある現場

ここまでの数字が、実際の現場でどのように起こっているのか。代表的な事例を、当社の相談支援AI「DFSロボット君」の一次対応と、専門家による構造分析の二段構えでご紹介します。

紹介する事例は、当社窓口に寄せられた複数の相談をもとに、構造を損なわない範囲で合成・抽象化した事例です。特定の個人・施設・事案を示すものではありません。

相談者・対象者・職員の氏名、施設名その他の特定可能な情報は一切含みません。

事例1 「責める」と「感謝する」を繰り返す家族
構造:感情の揺れ・境界の曖昧化 / 行為:暴力型 /危険度 3
現場の状況

特別養護老人ホームの職員です。ある利用者のご家族が、面会中に突然、職員を背後から羽交い締めにしました。顔を近づけて「あなたの経歴は何なのか」「対応がなっていない」と強い口調で責めたのです。

ところが、しばらくすると泣き出して「ありがとう」「よろしくお願いします」と感謝を述べ、職員の手を取って穏やかに帰っていきました。以前にも別の職員へ威圧的な言動があったと聞いています。何が起きているのか分からず、どう対応すればいいのか困っています。

DFSロボット君の一次回答

◤ DFSロボット君

身体に触れる行為が起きており、まず職員の方の安全を最優先に考えてください。当面、そのご家族が面会される際は、職員を一人にせず、複数名で対応してください。そのうえで、次のことをお勧めします。

いつ・どこで・どのような言動があったかを、その都度、記録してください。穏やかになった後の様子も含めて残しておくと、状況の全体が見えやすくなります。

対応した職員の方に、「あなたの対応が悪かったわけではない」ことを、はっきりお伝えください。体調や気持ちの面も気にかけてあげてください。

面会の方法(時間帯・場所・立ち会いの有無など)を、事業所として一度見直すことをご検討ください。

身体的な接触が続く場合や、安全に不安がある場合は、管理者の方、必要に応じて警察や弁護士などの専門機関にご相談ください。法律に関わる判断については、わたしからはお答えできませんので、専門家におつなぎします。

専門家による構造分析

感情の揺れは、在宅・施設の現場で最も見落とされやすい危険です。「さっきは感謝してくれた」という記憶が、直前の攻撃を打ち消してしまい、職員も組織も「大丈夫だったから」と問題を先送りにしがちだからです。

しかし、揺れは「関係が良好である」ことの証ではなく、境界が曖昧になっているサインです。職員個人が「うまく受け止めよう」とすればするほど、関係に巻き込まれ、自責と過剰対応に陥ります。重要なのは、これを個人の相性や対応力の問題にせず、構造の問題として組織が引き取ることです。面会の方法を組織として定め、職員を一人にしない――それが、揺れに巻き込まれない確実な方法です。

事例 2 特定の職員だけが、狙い撃ちにされる
構造:圧の偏り / 行為:暴言型 / 危険度 3
現場の状況

有料老人ホームの管理者です。ある利用者が、特定の職員一人だけを標的にしています。

人格を否定する言葉、無視、「クビにしてやる」といった発言を繰り返し、夜勤中には手を上げようとする素振りもありました。

他の職員には穏やかなのです。担当から外した後も、廊下ですれ違うときに暴言を浴びせます。その職員は「自分が悪いのでしょうか」と悩み、心身に不調が出て、辞めたいと言い始めています。

DFSロボット君の一次回答

◤ DFSロボット君

特定の職員お一人に負担が集中している、とても心配な状況です。まず大切なのは、これはその職員の方に落ち度があるわけではない、ということです。ご本人にそのことをはっきり伝え、責任を感じさせないようにしてあげてください。

そのうえで、次のことをお勧めします。

  • その職員の方のときにだけ起きている出来事を、「誰が・いつ・どんな言動を」と具体的に記録してください。記録がないと、つい「個人の問題」として扱われてしまいが ちです。

担当を替える、複数名で対応するなど、その職員の方の負担を下げる手を早めに打ってください。担当を替えることは「逃げ」ではなく、職員を守るための正しい対応です。

  • すでに体調に不調が出ておられるとのことですので、その職員の方のフォローを最優先にしてください。

手を上げようとする素振りなど、安全に関わる事態については、管理者の方や専門機関にご相談ください。

専門家による構造分析

圧の偏りは「生理的に合わない」「あの職員の対応が悪い」と説明されがちですが、攻撃は多くの場合、優しく、断りにくく、丁寧な職員に向かいます。つまり、標的にされるのは「弱いから」ではなく、攻撃が通りやすいからです。

ここで個人対応を続けると、その職員は必ず疲弊し、離職に至ります。本書のデータでも、圧の偏りを構造とする相談の多くが危険度3に達していました。担当変更をためらわないこと――それが、職員を失わないための最も現実的な打ち手です。

事例 3 「これくらい」の要求が、暴言に変わるとき
構造:契約外要求 / 行為:暴言型 /危険度 3
現場の状況

特別養護老人ホームの職員です。ある利用者について、医療上の食事制限があるにもかかわらず、ご家族が「食品を持ち込んで食べさせてほしい」と繰り返し求めてきます。

制限を説明してお断りすると、担当職員を怒鳴りつけ、長時間その場に引き止めます。ナースコールを連続で鳴らし、特定の職員ばかりを呼び出します。ご家族もこの要求に同調しており、現場は対応に追われています。

DFSロボット君の一次回答

◤ DFSロボット君

怒鳴られると、つい「どうすれば収まるか」に気を取られてしまいますが、このケースで大切なのは、そもそもの要求(医療上の制限に反する食品の持ち込み)に、事業所としてはっきり線を引くことです。ここが曖昧なままだと、同じことが繰り返されてしまいます。

具体的には、次のように対応されるとよいでしょう。

「医療上の制限に基づき、○○はお受けできません」と、事業所としての方針を統一してください。職員によって対応が違うと、「前の人はやってくれた」という言葉を生んでしまいます。

怒鳴られたこと、長時間その場に引き止められたこと、呼び出しの回数などを、記録してください。

特定の職員に集中しないよう、複数名や管理者を交えて対応してください。

線を引くことは、利用者様を突き放すことではありません。制限は利用者様ご本人の安全のためのものです。要求が収まらず、今後の対応にお困りの場合は、管理者の方や、必要に応じて行政・専門機関にご相談ください。

専門家による構造分析

契約外要求は、本書のデータで最も多く見られた構造(34.0%)でした。そして、この事例のように、しばしば暴言や長時間拘束といった別の行為を伴います。第3部の表7で見たとおり、「暴言型」の相談の背後には契約外要求が数多く潜んでいます。

ここで大切なのは、境界を引くことは、利用者やご家族を突き放すことではないという視点です。医療上の制限は利用者本人の安全のためのものであり、境界を守ることは、利用者の安全と、職員が働き続けられる環境の、両方を守る技術です。線を引くのは職員個人ではなく、組織でなければなりません。

事例 4 誰も、全体を把握できていない
構造:情報分断 /危険度 3
現場の状況

介護支援に関わる者です。ある利用者について、ご家族が複数の事業所・ケアマネジャーに、頻繁にメールや電話を繰り返しています。返信が遅い、文面が気に入らないと責め、職員の人格や能力を否定して長時間罵倒します。

担当を変えても続きます。困っているのは、関わっている事業所がそれぞれ別々に対応していて、誰も全体像をつかめていないことです。ある事業所では「もう限界」、別のところでは「まだ大丈夫」と、認識がバラバラなのです。職員に不眠が出て、退職者も出始めています。

DFSロボット君の一次回答

◤ DFSロボット君

いちばんの問題は、関わっている事業所それぞれが別々に対応していて、誰も全体の状況をつかめていないことにありそうです。「まだ大丈夫」と「もう限界」が同時にある、というのは、まさにそのサインです。

まず、次のことから始めてみてください。

各事業所が受けている「誰が・いつ・何を言われたか」を一つの記録に集めて、時系列で並べてみてください。断片がつながると、危険の全体像が見えてきます。

関係する事業所・職種で、情報を共有する場(カンファレンスなど)を持ってください。

ご家族への対応の窓口を一本化し、それぞれが個別に対応するのをやめて、関係者で足並みをそろえてください。

すでに不眠や退職といった影響が出ておられるとのことですので、最前線の職員の方を孤立させないことを、何より優先してください。

専門家による構造分析

情報分断は、本書のデータで3番目に多い構造(15.6%)であり、危険が最も深刻化したときに現れやすい構造です。多職種・多事業所が関わる在宅・介護では、「危険は集中するのに、情報は分散する」という 構造的な矛盾が、つねに起こりえます。

ここで最も危険なのは、「誰かが対応しているはず」という思い込みです。全員がそう思っているあいだに、最前線の一人が潰れていきます。必要なのは、情報を統合し、共通の物差しで危険度を評価し、組織として―― ときには事業所の枠を越えて――介入することです。本書が繰り返し述べてきた「記録し、共有し、組織で受け止める」という原則が、最も試されるのが、この情報分断です。

4つの事例に共通するのは、危険が「人」ではなく「構造」に宿っているということです。そして、構造を見抜けば、打つべき手が見えてきます。行為の背後にある構造を読み、個人ではなく組織として受け止める―― それが、現場を、職員を、そして利用者本人のケアを守ることにつながります。

第4部

提言・実務編

本書の分析から導かれる提言と、現場でそのまま使える対応チェックリスト。

4-1 国が求める措置は、現場の実態と一致している

第1部で見たとおり、2026年10月1日から、事業主にはカスハラ対策が義務づけられます。国が示した措置「一人で対応させない」「記録を残す」「事実関係を確認する」「担当を変更する」は、抽象的な理念ではなく、本書が現場の相談から見出した必要と、正確に一致しています。

表 8国が求める措置と、本書が現場で見た必要の対応
国が求める措置(厚労省指針)本書の分析が示した、現場での必要
一人で対応させない体制「圧の偏り」(12.5%)「情報分断」(15.6%)への対策そのもの。特定職員に集中する攻撃は、組織で受け止めるほかない
録音の活用相談の30.2%で、すでに録音が対応手段として現れている。現場は必要性を実感している
事実関係の迅速な確認危険度1〜2の段階で拾うために不可欠。記録がなければ、危険度3になるまで気づけない

4-2 提言 ― 危険が「手遅れ」になる前に拾う仕組みを

本書が示した最も重要な事実は、相談として表に出てくる時点で、その約7割が、すでに組織介入が不可欠な段階(危険度3)に達しているということでした。そして、危険度1――「違和感」の段階で拾えた相談は、わずか8%にすぎませんでした。

これは、現場に「危険が小さいうちに拾う仕組み」が足りていないことを意味します。違和感は記録されず、共有されず、相談にもつながらないまま、静かに危険度3へと育っていきます。したがって、最優先の提言は次のとおりです。

提言1

危険は、記録され、共有され、組織が介入できる形になって初めて、確実に止めることができます。

現場の職員が声を上げられ、早い段階で一次的な対応を受けられ、その記録が組織に残ります。そうした窓口の機能を整えることが、危険度3の事態を未然に防ぐ、最も確実な備えです。

打ち手を、優先度で整理すると次のようになります。縦軸は「緊急度(放置したときのリスクの大きさ)」、横軸は「着手のしやすさ」です。

図 13対策の優先度マトリックス
着手のしやすさ → 緊急度 → 最優先 ● 相談・記録の窓口機能 ● 一人で対応させない体制 ● 違和感を記録に残す運用 重要・計画的に ● 危険度スケールの共有 ● 多職種での情報共有 ● 外部連携のルート整備 ● 対応マニュアルの整備 ● 研修の実施 ● 契約条項の見直し ● 事例の蓄積・振り返り
提言2

早期に対応することは、コストではなく投資です。

危険度3に至った相談では、職員の心身の不調(14.9%)、離職の意向(7.2%)、行政・自治体との対応(36.2%)、契約の見直し(20.6%)といった深刻な影響が現実に生じています。

一件が危険度3まで進行した際に失われるもの「人材、時間、地域からの信頼」を考えれば、危険を小さい段階で対応できる仕組みへの投資は、はるかに小さな負担で済むと言えます。

職員を守ることは、結果として、患者・利用者が受けるサービスの質を守ることにつながります。

離職という「見えないコスト」

前項で述べた「投資」を金額に置き換えてみます。本書では、71件の相談で職員から離職の意向が示されました。職員が1人離職すれば、その補充には現実の費用が発生します。介護福祉士(常勤)を人材紹介で採用した場合の手数料は、1人あたり平均約89万円とされています(全国老人福祉施設協議会「令和5年度 人材紹介手数料実態調査」)。看護職などではさらに高額となる傾向があります。

もちろん、「離職の意向」は必ずしも実際の離職を意味するものではありません。そこで、離職意向が示された71件のうち、3〜5割が実際の離職に至ると仮定します(介護職の年間離職率は13.1%〔介護労働安定センター「令和5年度 介護労働実態調査」〕であり、明確に離職意向を示した層の離職率はこれを上回ると考えるのが自然ですが、ここでは低めに見積もります)。

この仮定に基づくと、採用費用だけで、約21〜36人 × 89万円 = 約1,900万〜3,200万円 の負担が生じる計算になります。これは採用手数料という直接費用のみを試算した額であり、引き継ぎ・教育に要する時間、残された職員への負荷増大、サービス品質の低下といった間接的な損失は含まれていません。

そして、この損失の多くは、離職に至る前の段階、すなわちカスハラが危険度1〜2の段階で記録され、共有され、組織が受け止める仕組みがあれば、防げた可能性があります。早期に拾い上げる仕組みへの投資は、これらの損失額と比較すれば、はるかに小さな負担で済むと言えます。

※本試算は一定の仮定に基づく概算であり、実際の離職者数・費用を示すものではありません。

4-3 現場で使う ― 危険度別 対応チェックリスト

最後に、現場でそのまま使えるチェックリストを示します。危険度の段階ごとに「何をすべきか」を整理したものです。院内・事業所内での掲示・配布にご活用ください。

表 9危険度別 対応チェックリスト
段階現場で行うこと
危険度 1 / 違和感
  • 「声のトーンが強い」「特定の職員にだけ態度が違う」といった違和感を、その日のうちに記録する
  • 小さな契約外の依頼も「今回だけ」で流さず、記録に残す
  • 気づいた違和感を、口頭でよいのでチーム内で共有する
危険度 2 / 負荷の集中
  • 「誰に」「どの場面で」負荷が寄っているかを事実として可視化する
  • 対応をチームで統一する(「前の人はやってくれた」を生まない)
  • 管理者が同行し、状況を職員個人ではなく組織として把握する
  • 必要に応じて録音など、事実を残す手段を検討する
  • 一人で対応させない(複数名対応・同行・担当変更)
危険度 3 / 組織介入が必須
  • 事実関係を記録として整理し、管理者・組織で共有する
  • 職員の心身の状態を確認し、「あなたのせいではない」ことを明確に伝える
  • 契約や体制の見直しを組織として検討する
  • 法的な判断が必要な場面では、弁護士等の専門家に相談する

最も大切なのは、危険度1の段階で気づくことです。

危険度3に至った事案への対応は、どうしても大がかりになります。しかし本書が示したように、危険度3の事案も、出発点は危険度1の「違和感」にすぎません。違和感の段階で記録し、共有できていれば、多くの事案は危険度3に進行する前に抑止することが可能です。

このチェックリストの出発点が「違和感を記録する」である理由は、まさにそこにあります。

4-4 結びにかえて

本書は、当社の相談窓口に寄せられた相談を分析したものです。そこから見えてきたのは、現場が個人の努力と我慢によって危険を抱え込んでいる実態でした。そして、相談として表に出るころには、その多くがすでに深刻な段階に達しているという事実です。

危険は、突然ではなく、静かに積み上がります。だからこそ、それを個人に背負わせるのではなく、組織として、そして地域として受け止める仕組みが必要です。2026年10月に向けて対策を整えようとされている自治体・医療関係機関の皆さまにとって、本書が、実態に基づいた仕組みを設計するための一助となれば幸いです。

また、この分析は毎年継続することで、経年の変化を捉えることが可能になります。「現場で起きていることを記録し、分析し、社会に届け続けること」その営み自体が、現場を守る力になると私たちは考えています。

巻末

調査概要・相談窓口のご案内

調査概要

調査主体

株式会社ウィ・キャン

対象期間

2025年度(2025年4月1日 〜 2026年3月31日)

対象

2025年度に当社カスハラ相談窓口に寄せられた相談 995件

※このほかに提携先等から転送された電話を中心に、患者・家族・関係者からの電話への対応1,306件がありますが、性質が異なるため本書の「相談」には含めていません。

分析方法

相談記録テキストについて、当社の分類基準(本書 表4〜表6)に基づき、類型・危険度・対応状況等を分類しました。分類結果は当社にて確認し、確定しています。

類型および危険度は、当社がメールマガジン連載・小冊子で継続して用いてきた基準に準拠しています。

個人情報の取り扱い

分析にあたっては、相談者・対象者・職員の氏名、施設名・事業所名その他の特定可能な情報を対象から除外しています。本書に掲載する集計・事例には、これらの情報を一切含みません。

本調査の対象について

本書の相談件数995件は、当社がハラスメント相談窓口で相談を実施した記録に基づく件数です。類型・危険度の構成は、この995件の相談内容から分類したものです。

本書の数値を引用される際は、相談件数995件に基づく旨を併記くださいますようお願いいたします。

匿名化について

本書に掲載する事例は、複数の相談内容を合成・抽象化したものであり、実在の特定の事例ではありません。相談者・対象者・職員の個人名、施設名・事業所名その他の特定可能な情報は一切含みません。

発行

株式会社ウィ・キャン

〒105-0004 東京都港区新橋6-9-2 新橋第一ビル本館7階
電話:03-6432-0080 / メール:info@wcan.co.jp
ホームページURL:https://www.wcan.co.jp/

発行年月日:2026年9月1日

相談窓口のご案内

本書でご報告した相談は、当社が運営するカスハラ対策サービス DFS(ディフェンス・フォース・サービス)の相談窓口に寄せられたものです。現場の危険を「記録し、共有し、組織として介入できる」状態にするための仕組みとして、以下をご用意しています。

DFS(ディフェンス・フォース・サービス)について

2016年にサービスを開始し、現在約92,000法人にご導入いただいています。2018年には、東京都医師会の主要事業として採用されました。

表 10DFSで提供している仕組み
サービス内容
カスハラ相談窓口警察OB・クレーム対応の専門家が電話で対応します。本書でご報告した995件の相談は、この窓口に寄せられたものです。
AI相談ロボット君 / (DFSロボット君)24時間365日、チャットで一次対応を行います。夜間・休日など、専門家にすぐつながらない時間帯でも、その場で対応の方針を確認できます(本書 第3部の事例をご参照ください)。
DFS見守りサービスクチコミサイト等への書き込みや誹謗中傷を監視し、対応を支援します。
ハラスメント対応研修オンデマンド動画等による研修をご提供します。窓口の設置とあわせて、職員が対応の型を身につけるための仕組みです。

2026年10月1日以降、カスハラ対策は事業主の義務となります。相談窓口の設置、職員への周知、被害を受けた職員へのケア――そのいずれについても、自治体・医療関係機関の皆さまのご状況にあわせてご相談を承ります。

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株式会社ウィ・キャン DFS(ディフェンス・フォース・サービス)担当

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